第5回(2012年7月4日掲載)
(医療従事者向けです)
以前、このHPで当院電子カルテから降圧剤の処方内訳を示したことがある。それから2年たち、合剤もDRIも長期処方が可能になっている。果たして処方傾向に変化がみられるか?比較してみた。
上の表をご覧いただきたい。約2か月間で当院を受診した高血圧患者に対する処方薬を電子カルテから抽出しグループ分けした。降圧剤として処方した全ての薬に対する件数をパーセンテージで示した。
合剤と単剤を合わせると、RAS阻害剤が5割以上、CCBが4割、併せて9割を占めるのは2年前と不変である。
我ながら驚くのは利尿剤が(合剤と単剤を合わせると)24%を占めることである。前回も20%と決して少なくない率であったが、今回は何と24%である。一昔前はサイアザイドをお情け程度に使っていただけなのに、今や高血圧患者の4人に1人に利尿剤を投与しているのである。隔世の感がある。それだけ食塩感受性を有する患者が多いという事になるのだろう。東北地方という地域性もあるのかもしれない。
残念なのはDRI(アリスキレン)である。「腎血流を上げるRAS阻害剤」として2年前の私は絶賛していた。使用感も良かったのだが、ご存じの事情で能書き上の禁忌が増えてしまい、使いづらくなった。これがなければ2~3%は確保できていたはずである。
発売当初、他のRAS阻害剤との併用を勧めていたメーカーの企業姿勢は如何なものか。本来適応は狭いところからすこしずつ広げていくべきではないか。何事にも「畏れ」を持って当たることが肝要であろう。